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エッチングとは一般的に、化学薬品や反応ガスによる腐食作用を利用して表面加工を行う加工法のひとつです。腐食を利用するという特性から金属に対しておこなわれることが多く、鉄や銅、アルミなどの加工に使われたり、プリント基板の作製に使われています。
それでは、半導体のエッチングとはどういったものでしょうか?
本記事では、半導体の製造プロセスにおけるエッチングの手法やメリットについて詳しく解説していきます。
エッチングとは、リソグラフィーによって転写されたウェーハ上の回路パターンに沿って、不要な薄膜などを除去していく工程です。
エッチングによって薄膜に回路のパターンが作られたら、不要になったフォトレジストを除去します。これによって、最終的に回路の部分の薄膜だけがウェーハ上に残ります。
レジスト剥離液を使って除去する方法と、酸素プラズマなどを用いて除去する方法があります。
後者の酸素プラズマなどを用いて除去する方法は「アッシング」と言い、フォトレジストを化学反応によってガスの状態にして、ウェーハ上から除去するしくみです。
エッチングには薄膜を削り取る方向によって、等方向エッチングと異方向エッチングの2つに分けられます。
等方向エッチング
等方性エッチングとは、エッチングの反応がすべての方向に向かって行われることです。
エッチングの反応が材料表面のレジストに近い部分で開始された場合、すべての方向で腐食が進むとレジストの下に入ってレジストの下をえぐるように反応が進むことになります。
異方向エッチング
異方性エッチングとは、エッチングの反応が一方向に向かって行われることです。
これにより、エッジの立った加工が行えます。これにより、高精度のパターンを作れます。
半導体製造におけるエッチングの手法には、液体を利用したウエットエッチングと、プラズマやガスを利用したドライエッチングの2つに分けられます。
ウェットエッチング
ウェットエッチングは、硫酸や硝酸、リン酸、フッ酸などの薬液を使用した腐食作用によって形成した薄膜の形状加工をおこないます。
ウェットエッチングのメリットは、装置の構造が簡単で液体薬品のコストが比較的低く、一度に数十枚のウェーハのエッチングが可能であるところです。
逆にデメリットは、等方向エッチングにあたるため微細なパターン形成には限界があります。また、使用後の薬液の廃液処理が必要であり、環境負荷が高くなります。
ドライエッチング
ドライエッチングは、薬液の腐食作用を利用せずにエッチングする方法で、ウェットエッチングに代わり、現在の主流になっている方式です。主に反応性イオンエッチング(RIE:reactive ion etching)や反応性ガスエッチング、スパッタエッチングがあります。
各々違った特徴がありますが、本記事では一般的な反応性イオンエッチングについて解説します。
反応性イオンエッチングとは、真空容器内でガスをプラズマ化し、化学反応と加速したイオンで膜を削って除去するエッチング方法です。
具体的な流れは、プラズマ放電を行う電極テーブルが設置された真空容器内にウェーハを入れ、エッチングガスを注入します。そして、電極に高周波電圧を与えてガスをプラスマ化します。プラズマ化されたガスは、プラスの電極に置かれているウェーハに衝突していきます。
ガスは垂直方向に加速されて衝突するため、薄膜状のフォトレジストの形状と同じように加工されます。そのため反応性イオンエッチングは、異方向エッチングにあたります。
微細加工が可能で後工程として洗浄を必要としないメリットがありますが、真空ユニットが必要で装置が高額になります。
エッチング装置は、米国と日本が強いです。
特にドライエッチング装置は、Lam Researchが強いです。反応性イオンエッチングのほか、対象素材を原子単位の厚さで削る原子層エッチングやトランジスタなどに搭載される原子の加工を行うメタルエッチング、導体部分を保護するための絶縁膜を形成する絶縁膜エッチングといった加工技術をもちます。
- Lam Research(米国)
- Applied Materials(米国)
- 東京エレクトロン(日本)
- 日立ハイテク(日本)
出典:経済産業省 マイクロエレクトロニクスに係る産業基盤実態調査
エッチングプロセスは、半導体デバイスの製造、MEMS(マイクロエレクトロメカニカルシステム)、ナノテクノロジーなどの分野で広く応用されており、微細なパターン形成と精密な加工が求められる現代の先端技術において重要な役割を果たしています。
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