なぜ半導体の製造にクリーンルームが必要なのか?仕組みも併せて解説

半導体は、空気洗浄度が一定以上確保されたクリーンルームで製造されています。

なぜクリーンルームが必要なのか一言で言うと、歩留まり(良品率)を向上させるためです。空気洗浄度が半導体製造の重要な要素となっています。

以下に、クリーンルームの役割や機能について解説します。

クリーンルームが必要な理由

半導体の製造には前工程と後工程がありますが、特に前工程では空気洗浄度が重要になっています。

その理由は、パーティクル(空気中に浮遊している微粒子や不純物、ゴミ)がウェーハ上に付着・堆積すると、リソグラフィーやドライエッチングなどの工程で回路パターンのショートや切断を引き起こす原因になるからです。

出典:日本電子株式会社

先端の半導体の配線の寸法は20nm以下にもなるので、僅かなパーティクルでも不良の原因になってしまいます。

歩留まり(良品率)を向上させるためにはクリーンルームが不可欠となります。

パーティクルについて

パーティクルとは、ナノレベルの空気中に浮遊している微粒子や不純物、ゴミのことです。スギやヒノキ花粉は直径30~40μm、黄砂は約4μm、PM2.5は2.5μm以下ですので、パーティクルは更に小さい事になります。

パーティクルの発生源は様々ですが、主に人体からの発塵、製造装置の可動部などから発塵します。

空気清浄度

クリーンルームの空気清浄度規格は、米国連邦空気清浄度基準 209Eが長く使用され、1立方フィート中の0.5μm以上の粒子数でクラス分けがされていました。しかし2001年11月に廃止され、現在はISO14644-1が清浄度評価方法を含めて唯一の国際規格となっています。

半導体製造の前工程ではClass3~5、後工程ではClass6~9の清浄度が求められます。

清浄度クラス上限濃度(個/m³)
ISO14644-1米国連邦規格0.1μm0.2μm0.3μm0.5μm1.0μm5.0μm
Class 110
Class 21002410
Class 311,00023710235
Class 41010,0002,3701,02035283
Class 5100100,00023,70010,2003,520832
Class 61,0001000,000237,000102,00035,2008,320293
Class 710,000352,00083,2002930
Class 8100,0003,520,000832,00029,300
Class 935,200,0008,320,000293,000

クリーンルームの仕組み

クリーンルームは、HEPAフィルターで空気中の微粒子を除去した空気を室内に供給しています。HEPAフィルターとは、粒径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上を捕集する性能ある高性能フィルターです。

クリーンルーム内は空気が常に循環するようになっており、循環する空気の流し方によって、主に一方向流式と非一方向流式があります。

一方向流方式

天井全体に高性能エアーフィルタを配置することで、気流が部屋全体で一定の方向に流れます。床をグレーチングにすることで、パーティクルが気流に沿って上から下に押し出されるように室外に排出されるので、パーティクルが室内に滞留・蓄積しにくい構造です。一方向流方式は、高い清浄度の維持することができます。しかし一方で、電力の消費が高く、ランニングコストがかかる傾向になります。

非一方向流方式

天井の一部に高性能エアーフィルタを設置し、別の一部にダクトなどの排気口を設けます。清浄空気を室内に供給し、室内で発生したパーティクルを希釈して排出する構造です。一方向流方式と比べて清浄度は低いが、コストの点でメリットがあるため、広く用いられています。

クリーンルームの運用

クリーンルーム内の清浄度を保つためにクリーンウェアの着用が必要だったり、清浄度を保つルールがあります。

クリーンウェア

クリーンルーム内での最大のパーティクルの発生源は、人です。人が動くことで汚染が広まります。

人体からの発塵を抑えるためにクリーンルーム内では、クリーンウェアを着用します。他にも防塵服・クリーン服・クリーンスーツ・無塵服といった呼ばれ方があります。人体に付着した塵埃などの異物がクリーンルーム内に漏洩するのを防ぐために着用します。一般的な材質はポリエステル長繊維やアラミド繊維などの合成繊維です。

さんのう
さんのう

一見暑そうですが、クリーンルーム内は空調で23℃前後に調整されているので、暑くもなく寒くもない快適な環境で仕事ができます。

入退室

クリーンルームに入室する際は、二重扉によって仕切られた小部屋で、清浄空気のエアシャワーを浴びて塵埃を落としてから入室します。塵埃がクリーンルーム内に入らないように、二重扉を同時に開けてはいけないというルールがあります。

床には粘着マットが敷かれ、靴底の塵埃を除去します。

退室時も二重扉によって仕切られた小部屋を介して退室します。

クリーンルームの四原則

清浄空間を作り、維持するための条件として以下の原則があります。

  1. 微粒子を持ち込まない。
  2. 微粒子を発生させない。
  3. 発生した微粒子を速やかに排除する。
  4. 微粒子を堆積させない。

まとめ

クリーンルームは、製品の品質や信頼性を向上させるために欠かせない施設であり、適切な管理が必要です。

わたしも職場では、歩留まり向上のために異物低減活動をしています。パーティクルは目に見えないので、発生源を見つけるのは難しい事です。しかし、地道に活動を続ける事が大切です。

参考文献