【集積回路とは?】集積回路(IC)の種類、特徴について初心者向けに徹底解説

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「集積回路っていったい何?」
「集積回路とICは同じ物?」

このような疑問にお答えします。

集積回路(IC:Integrated Circuit)は、トランジスタ、ダイオード、抵抗器、コンデンサーなどの電子部品を、1つの小さな半導体チップ上に集めた電子回路のことです。

この技術によって、電子機器は大幅に小型・高性能化し、製造コストも大きく削減されるようになりました。
コンピュータやスマートフォンなどの現代の電子機器のほとんどは、この集積回路の発展の恩恵を受けています。

この記事では、集積回路の種類、特徴について初心者向けに徹底解説します。

集積回路とは

集積回路(IC:Integrated Circuit)とは、トランジスタやダイオード、抵抗器、コンデンサーなど、複数の電子部品を1つの半導体チップの上にまとめて作り込んだ電子回路のことです。

従来、電子回路は個別の部品を1つ1つ基板に並べて接続していました。しかし、集積回路の登場により、これらを一体化してチップ化することが可能になり、次のような革新が起こりました。

  1. 小型化: 単一のチップ上に多くの機能を統合することで、デバイス全体のサイズと重量を削減できます。
  2. 高性能: トランジスタが互いに非常に近接しているため、信号の伝達時間が短縮され、高速動作が可能になります。
  3. 低コスト: 大量生産により、単位あたりの製造コストが大幅に削減されます。
  4. 高信頼性: 接続部品が少ないため、故障率が低下します。

集積回路の歴史

複数の電子部品を1つのチップ上に作り込むという集積回路(IC)のアイデアは、1952年にイギリスのレーダー科学者ジェフリー・ダマー氏によって公表されましたが、当時は実用化に至りませんでした。

1958年、アメリカのテキサス・インスツルメンツ(TI)社のジャック・キルビー氏が、半導体基板上に抵抗やトランジスタなど複数の回路素子を集積した世界初のICを発明しました。

1959年には、フェアチャイルド社のロバート・ノイスが、今日のICの基礎となるプレーナ型ICを独自に開発し、実用化に大きく貢献しました。プレーナ型とは、各素子間の配線を二酸化シリコン上に蒸着されたアルミニウム薄膜で行う方式です。従来の細線によるボンディングが不要となり、信頼性と大量生産性が大きく向上しました。

集積回路(IC)の登場は、電子機器の小型化・高性能化・大量生産を可能にし、1960年代には小型電卓などのデジタル機器が開発され、1970年代には一般家庭や産業分野で広く普及しました。

集積回路の種類

規模による分類(集積度の違い)

集積回路は1つのチップに搭載されている素子の数によって、以下のように分類されます。

  • 小規模集積回路(SSI: Small Scale Integrated Circuit)
    100素子以下/チップ
  • 中規模集積回路(MSI: Medium Scale Integrated Circuit)
    100~1000素子以下/チップ
  • 大規模集積回路(LSI: Large Scale Integrated Circuit)
    1000~10000素子以下/チップ
  • 超大規模集積回路(VLSI: Very Large Scale Integrated Circuit)
    10000素子以上/チップ

構造による分類:モノリシックとハイブリッド

モノリシックとは、一つの半導体チップ上に全ての部品が集積された集積回路の構造を指します。すべての部品が同じ半導体基板上に作られ、その上に配線されます。モノリシック集積回路は、一般的に単一のチップで完結するため、製造プロセスが比較的単純であり、高い集積度と信頼性を実現します。一般的なCPUやメモリなどの集積回路は、モノリシック構造を持っています。

ハイブリッドは、複数の独立した部品が異なる基板上に作られ、それらが接続された構造を指します。半導体デバイスや電子部品が基板上に実装され、後で接続されることが特徴です。この接続は、導電性ペーストや金線ボンディングなどの方法で行われます。ハイブリッドは、異なる製造技術や素材を組み合わせることができ、特定の要件に応じて高性能かつ多機能なデバイスを製造することが可能です。

モノリシックとハイブリッドは、それぞれの特性に応じて異なる用途に使用されます。一般的に、高い集積度が求められる場合にはモノリシックが、柔軟性や特定の要件に対する最適なソリューションが求められる場合にはハイブリッドが選択されます。

トランジスタの種類による分類:バイポーラICとユニポーラIC

バイポーラICは、バイポーラトランジスタを使用して製造された集積回路です。バイポーラトランジスタは、n型とp型の半導体がp-n-pまたはn-p-nの接合構造を持つ3端子の半導体素子であり、電流増幅およびスイッチングの機能を持ちます。バイポーラICは、高速な動作と高い増幅能力を持ち、高周波アプリケーションやアナログ回路で広く使用されています。代表的なバイポーラICには、アナログオペアンプや高周波増幅器などがあります。

ユニポーラICは、FET(Field Effect Transistor)を使用して製造された集積回路です。FETは、ゲート、ドレイン、ソースの3つの領域を持ち、ゲートに電圧を印加することでドレインからソースへの電流を制御します。ユニポーラトランジスタは、低消費電力や高い入力インピーダンスを特徴とし、主にデジタル回路や低電力アプリケーションで使用されます。

バイポーラICとユニポーラICは、それぞれの特性に応じて異なるアプリケーションに使用されます。バイポーラICは高速なスイッチングや高周波応答が必要な場合に適しています。一方、ユニポーラICは低消費電力や高い入力インピーダンスが重要な場合に適しています。

種類による分類:デジタルとアナログ

デジタル集積回路は、主にデジタル信号を処理するために設計されています。これらの回路は、二進数のビット(0または1)を処理し、論理演算、データ転送、制御などの機能を実行します。主なデジタル集積回路には、マイクロプロセッサ、メモリ、ロジックゲートなどがあります。デジタル集積回路は、コンピュータ、通信システム、デジタル制御などの分野で広く使用されています。

アナログ集積回路は、主にアナログ信号を処理するために設計されています。アナログ信号とは時間とともに変動する信号で、音波や電圧、電流、温度などの連続的な変化がこれにあたります。主なアナログ集積回路には、オペアンプ、ADC(アナログ-デジタル変換器)、DAC(デジタル-アナログ変換器)、フィルターなどがあります。アナログ集積回路は、オーディオ機器、通信機器、センサーインターフェースなどの分野で広く使用されています。

集積回路の製造プロセス

集積回路の製造には、電子回路を作る「前工程」とウェーハを切り出して製品に加工する「後工程」があります。

前工程には、電子回路になる薄膜を作る「成膜」、回路をウェーハに転写する「リソグラフィー」、リソグラフィーで転写された回路に沿って薄膜を加工する「エッチング」、シリコンに不純物を加えて電気を通すようにする「イオン注入」、薄膜の表面の凸凹を磨いて平らにする「平坦処理」などがあります。

後工程には、ウェーハから個々の半導体チップを切り出す「ダイシング」、チップをリードフレームに固定する「ダイボンディング」、チップとリードフレームの間に電気が通るように金線を取り付ける「ワイヤーボンディング」、樹脂でチップをカバーする「モールディング」などがあります。

詳細は下記の記事で解説していますので、ご覧ください。

半導体の作り方を解説!半導体製造の主な12工程まとめ

まとめ

集積回路は、電子技術の発展において中心的な役割を果たしています。集積回路の登場により、デバイスの小型化、性能の向上、製造コストの削減が実現しました。

また、省エネルギーという観点からも重要であり、より少ない電力でより多くの計算を行うことが可能になりました。

現代社会では、通信から医療、交通、家電製品に至るまで、あらゆる場面で集積回路が使用されています。

参考文献

  • 高野秀次・安藤久夫・加藤光文「電子機械制御入門」、理工学社(2004/9/10)
  • エレクトロニクス市場研究会「図解即戦力 半導体業界の製造工程とビジネスがこれ1 冊でしっかりわかる教科書」、技術評論社 (2022/3/2)