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JASM(TSMC熊本)とは?熊本の半導体新拠点を徹底解説

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近年、半導体不足や日本政府の大規模な支援によって、日本の半導体産業が再び注目を集めています。
その中心にあるのが JASM(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing株式会社) です。
世界最大の半導体受託製造企業であるTSMCが日本に設立した子会社で、日本の半導体産業復活の象徴とされています。

本記事では、JASMの概要・設立の背景・技術や生産能力・日本にもたらす影響などを初心者の方にも分かりやすく解説します。

最後まで読めば、「なぜ今、JASMがこれほど注目されているのか」がしっかり理解できるはずです。

JASMとは?熊本に誕生したTSMCの日本子会社

JASMは、2021年12月に設立された半導体製造会社で、世界最大の半導体ファウンドリである台湾TSMCが過半数を出資しています。

ソニー、デンソー、トヨタといった日本を代表する企業も株主として参画している点が特徴です。

TSMCの創業者のモリス・チャン氏は「JASMは日本と世界の半導体供給の回復力を向上させ、日本の半導体製造のルネサンス(復興)を開始するだろう」と語っており、その存在は日本の製造業復活にとって大きな意味を持ちます。

会社情報

主な会社情報は下記の通りです。

設立2021年12月10日
事業内容導体受託製造(ファウンドリ)
本社熊本県菊池郡菊陽町大字原水4106番地1
株主構成TSMC(86.5%)、ソニー(6.0%)、デンソー(5.5%)、トヨタ(2.0%)
従業員約1,900名(2025年1月時点)
URLhttps://www.tsmc.com/static/japanese/careers/jasm/index.html

設立の背景

JASM設立の背景には、2020年末に深刻化した世界的な半導体不足があります。
自動車やスマートフォンからAIやデータセンターまで、あらゆる産業に欠かせない半導体は「戦略物資」としての重要度が再認識されました。

しかし、半導体製造装置や材料の分野で強みを持つものの、40nm未満の先端ロジック半導体を作る技術力がないのが実情で、先端ロジック分野では「世界から10年以上遅れている」とされています。
これにより、先端プロセス品の多くを台湾に依存していました。

そこで経済産業省が中心となり、世界最大のファウンドリ企業であるTSMCの工場を日本国内に誘致する活動が始まりました。
政府は第一工場と第二工場に対して総額1兆2,080億円もの補助金を決定しており、国家的なプロジェクトとして位置づけられています。

JASMは、日本における安定した先端半導体生産拠点となり、「日本の半導体エコシステムを強化し、国内外で業界の長期成長に貢献すること」を使命としています。

JASMの生産能力とプロセス技術

JASMは、世界的に旺盛な半導体需要に対応するため、複数のプロセス技術と高い生産能力を有します。

第一工場

  • 稼働開始:2024年12月
  • プロセス技術:22/28nm、12/16nmプロセス
  • 月間生産能力:55,000枚(300mmウェーハ換算)
  • 主な用途:自動車、産業機器、スマートフォン・家電向け

特にソニーのCMOSイメージセンサーやトヨタグループの自動車向け半導体が中心です。

第二工場

  • 稼働開始:2027年末予定
  • プロセス技術:40nm、22/28nm、12/16nm、6/7nm
  • 月間生産能力:両工場合計で100,000枚以上
  • 主な用途:自動車、産業機器、民生機器、ハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)

第二工場は日本国内の最先端ニーズ(AI、自動運転、先進産業)と安定的な汎用供給(産業・民生・車載)を両立する生産体制を担います。

JASMがもたらす地域経済と社会への影響

雇用と人材育成

第一・第二工場合わせて約3,400名の雇用が創出される見込みで、特に国内から学歴を問わず約1,200名を積極雇用する予定です。

また熊本大学や九州大学と連携し、奨学金やインターンシップ制度を通じて次世代エンジニア育成に力を入れています。

地域経済への波及効果

JASMの工場設置により、熊本県全体で年間1,700億円以上の経済効果が見込まれています。

さらに広範な視点では、2022年から10年間の経済波及効果は約6.9兆円と試算されており、約90社が熊本県内に拠点施設・工場増設を公表するなど、地域経済の活性化に大きく貢献します。

環境への取り組み

  • 再生可能エネルギー100%(RE100)を達成
  • 水の再利用率75%以上を目指す先進的な管理システム

持続可能な生産体制を築くことで、環境配慮型の企業モデルを示しています。

JASMの年収・待遇

初任給

JASMの給与は日本企業と比べても高水準です。

  • 学部卒:月給28万円
  • 修士卒:月給32万円
  • 博士卒:月給36万円

賞与は基本給の約2か月分が年に2回支給されます。

初任給は熊本県内の地場企業の平均初任給(約20万円)を大きく上回っており、半導体業界の中でも高めに設定されています。

中途採用の年収レンジ

JASMの中途採用の年収レンジは、職種や経験によって幅がありますが、以下のようになっています。

  • 非管理職クラス:600万円~1,200万円
  • 管理職クラス:1,500万円~2,000万円

この範囲は技術職や管理職を含み、技術力やマネジメント能力に応じて変動します。

福利厚生も充実しており、住宅手当や社会保険、スキル育成プログラムなどが整備されています。

研修制度と海外経験

JASMの社員は台湾で6~9ヶ月間の研修を受けることができます。

世界最先端の現場で技術を学ぶ機会があり、キャリア形成において大きな強みとなります。

まとめ

JASMは、TSMCを中心に日本政府と大手企業が出資をして誕生した、熊本発の半導体製造拠点です。

世界最先端の技術を導入しながら、日本国内に数千人規模の雇用を生み出し、地域経済にも大きな波及効果をもたらしています。

キャリア面では、国内上位水準の年収、海外研修いった魅力がそろい、成長できる現場を求める方に最適な選択肢です。

出典:JASM 公式サイト・Wikipedia
https://www.tsmc.com/static/japanese/careers/jasm/index.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/Japan_Advanced_Semiconductor_Manufacturing