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ラピダス(Rapidus)株式会社は、日本の半導体産業の再興と経済安全保障の確立を目指し、2022年8月に設立された半導体メーカーです。
2027年までにプロセスルールが2nm(ナノメートル)以下の世界最先端ロジック半導体の開発・量産体制を国内に構築することを目標としています。
この記事では、半導体業界をまだよく知らない方にもわかりやすく、ラピダスの設立背景や技術戦略、課題について解説します。
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ラピダスの基本情報
ラピダス株式会社は、2022年8月に設立された新しい半導体メーカーです。
出資したのはトヨタ、ソニー、NTT、NEC、ソフトバンク、デンソー、キオクシア、三菱UFJ銀行という国内の大手企業8社。さらに政府からも1兆円規模の支援が行われています。
日本の半導体産業は、1980年代後半には世界のシェアで5割を誇るほどでしたが、1990年代以降は台湾や韓国、米国に後れをとり、大きくシェアを落としました。
しかし、AIや自動運転、5G・6G通信など次世代技術に欠かせないのが最先端半導体です。
日本政府は「このままでは経済安全保障に影響する」と危機感を強め、ラピダスを国家的プロジェクトとして支援しています。
ラピダスの現在の目標は「2027年に2ナノメートル(nm)世代の半導体を日本国内で量産すること」です。
現在主流の量産は5nm〜3nm世代で2nmは次の最先端世代であり、ここに挑戦しているのは世界でもTSMC、サムスン、インテルといったトップ企業のみです。
ラピダスがこの分野に食い込めれば、日本の存在感は一気に高まることになります。
会社情報
主な会社情報は下記の通りです。
| 設立 | 2022年(令和4年)8月10日 |
|---|---|
| 事業分野 | 半導体素子、集積回路等の電子部品の研究、開発、設計、製造及び販売 |
| 本社 | 東京都千代田区麹町4丁目1番地 麹町ダイヤモンドビル11階 |
| 資本金 | 73億4,600万円 |
| 決算業績 | 売上収益 7,565億円(2025年3月期) |
| 従業員 | 597名(2024年12月1日現在) |
| 平均年収 | 400万円~1400万円(職種による) |
| URL | https://www.rapidus.inc/ |
ラピダスの特徴
世界最先端の技術を導入
ラピダスの強みは「国際協業による最新技術の導入」にあります。
具体的には、米IBMからGAA(Gate-All-Around)トランジスタという次世代技術のライセンスを受けています。

従来の半導体は「FinFET」という構造でしたが、2nm世代では限界が近づいています。
GAAはチャンネル(電流が流れる部分)を全方向からゲートで囲む構造で、漏れ電流を減らし、省電力化と高性能化を両立できます。
これはAIや自動運転など膨大な計算を必要とする分野において非常に重要な要素です。
また、回路を刻むために必要な「EUV(極端紫外線)露光装置」も導入しています。
これはオランダASML社しか製造できない貴重な装置で、1台数百億円。
世界でも限られた工場にしかない最先端マシンを千歳工場に搬入したことは大きな進展といえます。
革新的なビジネスモデル「RUMS」
ラピダスは「RUMS(Rapid and Unified Manufacturing Service)」という独自モデルを掲げています。
従来の半導体業界は「設計(ファブレス企業)」「製造(ファウンドリ)」「後工程(パッケージング)」に分業化されていました。
一方、ラピダスはこの流れを変え、「設計支援から製造、パッケージングまで一貫して提供」することを目指しています。
これにより、例えば自動車メーカーが専用チップを短期間で手に入れることが可能になり、国内産業の競争力強化につながると期待されています。
AI活用と設計最適化
さらにラピダスはAIを積極的に取り入れています。
独自の設計支援ツール「Raads」を開発し、膨大な製造データをAIで解析して、その結果を顧客であるファブレス企業に共有することで、設計の最適化を迅速に行っています。
加えて、DMCO(Design-Manufacturing Co-Optimization)という設計と製造を同時に最適化する考え方も導入。
従来の半導体開発で用いられてきた「DFM(Design for Manufacturing:製造のための設計)」に加え、「MFD(Manufacturing For Design:設計のための製造)」という新しい概念を取り入れ、設計と製造の相互最適化を図っています。
開発拠点と進捗状況

ラピダスの主要拠点は北海道千歳市の「IIM-1工場」です。
2025年4月には試作ライン(パイロットライン)が稼働を開始し、同年7月には2nm半導体の試作に成功したと発表されました。
本格的な量産は2027年を目指していますが、その道のりは決して簡単ではありません。
巨額の投資や熟練した技術者が必要であり、課題も山積しています。
ラピダスが直面する課題
- 競争環境
TSMCやサムスンはすでに2025年の2nm量産を予定。ラピダスは少なくとも2年遅れで参入するため、顧客を獲得できるかが大きな課題です。 - 資金調達
量産には 5兆円規模 の投資が必要とされます。現在の政府支援や企業出資だけでは不足しており、追加の資金確保が欠かせません。 - 人材不足
高度な半導体技術を担える人材は世界的に不足しており、日本国内では特に人材が限られています。ラピダスは海外からの採用や北海道大学との連携などで補強を進めています。 - 技術的ハードル
GAA構造の量産は世界でもまだ実績が少なく、日本はFinFETの量産経験も乏しいため、一足飛びの挑戦となっています。歩留まりを安定させるまでが大きな山場です。
まとめ
ラピダスは、日本の半導体産業復活の切り札として誕生した新しいメーカーです。
2027年に2nm世代の半導体量産を目指し、国内外の強力なパートナーとともに挑戦を続けています。
資金や人材、技術といった課題は山積みですが、もし成功すれば日本が再び「半導体先進国」として世界に存在感を示す大きな一歩となるでしょう。
