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リソグラフィープロセスは、微細なパターンを半導体ウェーハ上に転写するための重要な工程です。この工程では、特定の波長の光を使用してフォトレジストと呼ばれる感光性材料を露光し、その後、現像によってパターンを形成します。
今回は、回路のパターンを形成するリソグラフィープロセスの紹介です。
リソグラフィーの工程を分けると、大きく3つの工程に分けることができます。
- フォトレジスト塗布
紫外線によって溶解性が変化するフォトレジストをウェーハ表面に塗布する工程 - 露光
紫外線でフォトレジストを感光させる工程 - 現像
余分なフォトレジスト溶かして回路を形成する工程
次に各工程の詳細について解説します。
フォトレジスト塗布工程では、紫外線に反応して性質が変化するフォトレジストをウェーハ表面に均一に塗ります。
前処理
ウェーハの表面は親水性が高い場合があり、水溶性の現像液を使用した際に、現像液がフォトレジストとウェーハの間に入りこみ、パターンが剥がれてしまうことがあります。このときはウェーハ表面を疎水性(水を弾く状態)にするためのHMDS(ヘキサメチルジシラザン)という有機溶剤で処理します。
スピンコート
フォトレジストはウェーハ上に均一の膜厚で形成することが求められます。
フォトレジストを高速かつ一様に塗る方法として使用されるのがスピンコートです。スピンコートは、ウェーハ表面を上向きに真空チャックで固定し、所定の量のフォトレジストを滴下し、ウェーハを高速回転させることで遠心力でフォトレジストが均一に広がります。フォトレジストの膜厚は回転数とフォトレジストの粘度で調整します。
プリベーク
ウェーハを80℃~100℃で加熱して、フォトレジストに含まれている溶媒を除去します。
回路パターンを転写するための原版(フォトマスク)を介してウェーハに紫外線を照射します。フォトマスクの透過部分からの紫外線がフォトレジストに当たることで、フォトレジストの化学的な変化が引き起こされ、パターンが形成されます。
フォトレジストは、露光によるの変化の仕方により「ネガ型・ポジ型」に分けられます。
露光された箇所が現像液に対して溶解性が低下し、現像によって露光した部分が残ります。
露光された箇所が現像液に対して溶解性が増大し、現像によって露光されなかった部分が残ります。
現像
現像液をウェーハに均一にかけ不要な部分を除去し、転写されたパターンを成形します。
ネガ型レジストの現像液はキシレンや酢酸ブチル、ポジ型レジストの場合は水酸化アンモニウムなどを主に使用します。
現像後は、リンスや純水で現像液をしっかり洗浄します。
ポストベーク
100℃程度でウェーハを加熱しレジストとウェーハ表面の密着性を向上させます。
リソグラフィー工程では、様々な装置が使用されますが、レジストの塗布から露光、現像の工程が一連の装置で行われる事がよくあります。
コータ・デベロッパ
レジストの塗布と現像を担当する装置がコータ・デベロッパと呼ばれる装置で、東京エレクトロンとSCREENが参入しています。特に東京エレクトロンは、世界シェア1位で市場の9割を占めています。
- 東京エレクトロン(日本)
- SCREEN(日本)
露光装置
露光装置市場では、オランダのASMLが圧倒定期なシェアを記録しています。ASMLは、世界で唯一、極紫外線(EUV)を使ったリソグラフィー装置を製造する企業です。EUV露光装置は、半導体の微細化に不可欠な技術です。
旧世代のArFドライ露光装置ではニコンが、KrF露光装置ではキヤノンが高いシェアを持っています。
- ASML(オランダ)
- ニコン(日本)
- キヤノン(日本)
- Veeco(米国)
出典:経済産業省 マイクロエレクトロニクスに係る産業基盤実態調査
リソグラフィープロセスは、フォトレジスト塗布、露光、現像の3つの工程に分けることができます。
半導体の微細化は、デジタル半導体の性能向上に不可欠です。最先端の2nmプロセスの量産開始が2025年に予定されています。
リソグラフィープロセスは、微細なパターン形成を実現するために不可欠な工程であり、半導体製造技術の進歩において重要な役割を果たしています。
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