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パワー半導体が注目されているようだけど、どういう半導体なの?
パワー半導体は、電力変換や電力制御の用途で使用されている半導体です。
産業機器、自動車、エネルギー変換システム、家電製品などのさまざまな分野で重要な役割を果たしています。
本記事では、パワー半導体の概要を説明してから種類や用途について解説します。
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パワー半導体は、高電力や高電圧を扱う電力変換や制御に使用される半導体デバイスの一種です。パワーデバイスとも呼ばれます。
パワー半導体と他の半導体デバイスとの大きな違いは、高い電圧、大きな電流を扱うことができるのがパワー半導体です。一般的には定格電流1A以上の半導体デバイスがパワー半導体とされています。
例えば、一般的なマイコンの動作電圧は3Vまたは5Vですが、パワー半導体は電圧では数百 Vから数千V程度まで、電流では数十Aから数百A程度までを扱います。
パワー半導体の役割は電力の変換で、次の4つがあります。
- 交流から直流への変換(コンバータ)
- 直流から交流への変換(インバータ)
- 交流の周波数を変換(周波数変換)
- 直流の電圧を変換(レギュレータ)
パワー半導体には、主に以下のような種類があります。
では、それぞれについて解説します。
ダイオード
順方向には電流が流れるが逆方向には電流が流れないというような、電流を一方向に流す働きを持った半導体素子がダイオードです。この働きのことを整流作用と言います。
この整流作用を利用して交流を直流に変換します。これがパワー半導体の役割のひとつであるコンバータです。
サイリスタ
サイリスタは、交流や直流のオン・オフスイッチとして使用されています。大電流で使用できるのが特徴です。しかし、スイッチングは高速ではありません。
交流から直流への変換や、直流から交流への変換、直流の電圧を変換に使用されます。
電車のモーターの回転制御、自動車のイグニッションスイッチ、産業機器の電力制御や電力変換に用いられます。
バイポーラトランジスタ
バイポーラトランジスタは、電流増幅およびスイッチングの機能を持つ半導体素子です。主な役割は大電流のスイッチングです。
入力電流に対して出力電流を得るため、スイッチングする際の消費電力は大きくなります。また。スイッチング速度が比較的遅いです。
詳しい解説は次の記事を御覧ください。
【トランジスタとは?】半導体の基本となるトランジスタについて解説パワーMOSFET
パワーMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor:金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)は、高速なスイッチング(数MHz)が可能な半導体素子です。バイポーラトランジスタは電流制御ですが、パワーMOSFETは電圧制御なので高速なスイッチングができます。
しかし一方で、バイポーラトランジスタと比較して高耐圧化や大電流に向いていません。
パワーMOSFETは200V以下の領域で、インバータやレギュレータ等に用いられています。
IGBT
IGBT(insulated-gate bipolar transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)は、比較的大電圧領域でも高速スイッチングが可能な半導体素子です。バイポーラトランジスタとパワーMOSFETを組み合わせた構造をしています。
大電力インバータなどで使用されます。
パワー半導体は、産業用から家庭用までさまざまな電子機器に使用されています。
- 電力網
インバータやコンバータを利用して電圧や周波数を変換しています。 - 産業機器
産業用ロボットなどのモーターの速度制御にインバータが使用されます。 - 新幹線
架線に送られた交流は車内で変圧され、三相インバータで交流誘導モータの回転制御をしています。 - 電気自動車
バッテリーに充電された直流の電気は、インバータにより交流へ変換されます。電流の周波数を調整することでモーターの回転速度をコントロールしています。 - IH調理器
電磁誘導の際にインバータで家庭の電気を数十kHzの交流電流に変換しています。
パワー半導体の発展により、電力網や産業用機器などの分野で高効率な電力変換や制御が実現されてきました。
今後も、電気自動車の普及や脱炭素社会いったテーマでパワー半導体の重要性がより一層高まっていくことでしょう。
- 佐藤 淳一「図解入門よくわかる最新パワー半導体の基本と仕組み[第3版]」、秀和システム(2022年)