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CMOS(シーモス)という言葉は、カメラや電子部品の説明書で見たことがあっても、実際にどんな仕組みなのか知らない方も多いのではないでしょうか?
スマホやデジカメに欠かせない“目”や“頭脳”の正体が、実はCMOSです。
CMOSは現代社会のあらゆるデジタル機器に欠かせない存在であり、スマートフォンの頭脳であるCPUや、カメラの目となるイメージセンサーなどに利用されています。
この記事では、CMOSの基本構造や動作原理、メリット・デメリット、そして実際の応用例までを初心者にも分かりやすく解説します。
「電子回路は難しそう…」と思っている方でも、読み進めればCMOSがどれほど身近で、なぜ重要なのかを理解できるはずです。
CMOSとは?

CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor、相補型金属酸化膜半導体)とは、「相補型」という名前の通り、N型MOSFETとP型MOSFETを組み合わせて構成された回路技術です。
MOSFETとは、電気の流れをオン・オフする半導体のスイッチのことです。
主にデジタル回路やLSI(大規模集積回路)、メモリ、マイクロプロセッサなどの電子機器に広く使われています。
CMOSは、下記のような優れた特性から現代の半導体デバイスの基本構造となっています。
低消費電力
CMOSが低消費電力なのは、回路が論理状態(0または1)を保っている間、電源とアースが直接つながることがないからです。
トランジスタが切り替わる瞬間にだけ、短時間電流が流れます。
つまり、スイッチング動作時以外はほとんど電力を消費しないので低消費電力となります。
高集積度で高速動作が可能
CMOSに使用されるMOSFETは、構造がシンプルで平面上に形成しやすいため、微細化に非常に適しています。
これにより、複雑な機能を小さなチップ内に詰め込むことができ、数十億個ものトランジスタを1つのチップに搭載することも可能になっています。
CMOSに使われるトランジスタは非常に小さく、この微細なサイズが高速動作を実現します。
微細化が進むにつれて、単一のMOSFETをスイッチングするのに要する電力量も減少し、高速化と消費電力の低減が同時に得られるようになりました。
コスト効率がいい
CMOSは製造が比較的簡単であり、大量生産に向いているので製造コストが比較的低いです。
このため、広範囲のデバイスに採用されています。
CMOSの動作原理
CMOS回路は、p型とn型のMOSFETを相補的に組み合わせることで機能します。
CMOS回路の代表例がCMOSインバータ(NOT回路)です。
回路構造

- NMOSとPMOSのゲートが接続され、入力(Vin)として使用されます。
- NMOSとPMOSのドレインが接続され、出力(Vout)として使用されます。
- NMOSのソースは接地(GND)に接続されます。
- PMOSのソースは電源(VDD)に接続されます。
動作例(インバーター)
- 入力信号が「0」(低電圧、Vss)の場合
PMOSFETのゲートには低い電圧が印加されるため、PMOSFETはオン状態になります。NMOSFETのゲートには低い電圧が印加されるため、NMOSFETはオフ状態になります。この結果、出力(Vout)はPMOSFETを通じて電源(VDD)と接続され、「1」(高電圧、VDD)が出力されます。 - 入力信号が「1」(高電圧、VDD)の場合
PMOSFETのゲートには高い電圧が印加されるため、PMOSFETはオフ状態になります。NMOSFETのゲートには高い電圧が印加されるため、NMOSFETはオン状態になります。この結果、出力(Vout)はNMOSFETを通じて接地(GND)と接続され、「0」(低電圧、Vss)が出力されます。
応用例
CMOSは、現代のほとんどのデジタル機器や半導体デバイスに広く利用されています。
マイクロプロセッサ(CPU)

コンピュータの中心的な頭脳であり、プログラムの命令を読み取り、演算や制御を行う電子回路のことです。
半導体チップ上に演算装置(ALU)、制御装置、レジスタ(内部記憶装置)などを集積し、コンピュータソフトウェアの命令を処理、実行します。
CMOSの技術によって、低消費電力で高性能を実現しています。
CMOSイメージセンサー

デジタルカメラやスマートフォンのカメラに搭載され、光を電気信号に変換します。
CMOSイメージセンサーには、以下の特徴があります。
- 低消費電力
- 高速読み出しが可能
- CCDセンサーと比べて安価に製造できる
メモリ(SRAMなど)

高速かつ低消費電力のメモリ回路に使用されています。
データをビット(0と1の二進数)で表現し、それを記憶するメモリセルを持っています。
メモリセルとは、半導体メモリにおいてデータを記憶、読み書きする最小単位となる回路構成のことです。
メモリセルの状態(電荷や電圧)を変えることで、データの読み書きを行います。
まとめ
半導体技術や電子回路を学ぶ上で、CMOSの基本原理を理解することは非常に大切です。
この記事を通して、CMOSがなぜ現代のデジタル社会を支えているのか理解できたはずです。
今後ニュースや製品説明で「CMOS」という言葉を見かけたときに、よりイメージしやすくなるでしょう。
参考文献
- CMOS(Wikipedia)
- 高野秀次・安藤久夫・加藤光文「電子機械制御入門」、理工学社(2004/9/10)