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半導体業界のビジネスモデルには、ひとつの企業ですべての製造を行う「垂直統合型」と、専業メーカーが製造工程を分業する「水平分業型」があります。
それぞれにメリット・デメリットがありますが、本記事では垂直統合型を取り上げて解説します。
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IDM(Integrated Device Manufacturer)とは、垂直統合型デバイスメーカーという意味で、開発・設計・製造・組立の4つの製造工程から販売までを一貫して手がけるメーカーのことです。
1980年代の日本は、総合電機メーカーがIDMとして半導体の製造を担っていました。
しかし1990年代後半から、半導体の高集積化に伴う製造プロセスの複雑化や、製造プロセス開発にかかる膨大なコストから、従来の垂直統合型(IDM)から水平分業型(ファブレス・ファウンドリ)へとビジネスモデルが変化していきました。
日本はその流れに乗れず、1988年に50.3%を占めていた世界シェアが2019年には10%にまで低下しました。
垂直統合型のメリットは主に次の3つがあります。
技術的優位性の確保
一社で開発して販売することで、研究、開発、製造に関するノウハウや機密情報をすべて社内に保持でき、外部への流出リスクを最小限に抑えることができます。
そのため、先端技術の開発した企業や独自技術を保有する企業は、市場を独占できたり、ユーザーの囲い込みができます。
品質管理の向上
自社内で全ての製造工程を管理することで、製品の品質を高い水準で維持することができます。
また、問題が発生した場合、迅速に原因を特定し、改善することが容易です。
コストの削減
サプライチェーン全体を自社で管理することで、中間マージンを排除でき、製造コストの削減が可能になります。
また、設備投資や生産計画を最適化することで、全体のコスト効率が向上します。
垂直統合型のデメリットは主に次の3つがあります。
高い初期投資と運営コスト
垂直統合型には、製造設備や研究開発施設への多額の初期投資が必要です。また、これらの設備を維持運営するためのコストも高くなります。
このため、経済状況や市場の変動に対するリスクが高まります。
経済的リスク
IDMは、サプライチェーン全体における経済的リスクをすべて背負うことになります。市場の需要が減少した場合、製造設備の稼働率が低下し、収益に直接的な影響を与える可能性があります。
柔軟性の欠如
組織の大型化によって市場のニーズへの対応が遅れる可能性があります。
また、技術やプロセスの変更に柔軟に対応することが難しい場合があります。
インテル
インテルは、1968年に設立された米国カリフォリニアにある半導体業界で世界最大規模の半導体企業です。
パソコンのCPUなどで利用されているマイクロプロセッサの提供を中心に様々な半導体の製造、販売を行っています。
サムスン電子
サムスン電子は、1969年に設立された韓国の世界最大の総合家電、電子部品、電子製品メーカーです。
大きな世界シェアを持つ製品は、中小型有機ELディスプレイのほか、薄型テレビや液晶パネル、スマートフォン、デジタルカメラなどがあります。半導体部門でもDRAMをはじめ、NAND型フラッシュメモリやシステムLSI、アプリケーションプロセッサなどを扱っています。
キオクシア
キオクシアは2019年10月に「東芝メモリ」から社名を変更しています。社名の「キオクシア」は、日本語の「記憶」(Kioku)と、ギリシャ語で「価値」を意味する「axia(アクシア)」を組み合わせたもので、社内公募で選ばれました。
主にNAND型フラッシュメモリを製造する半導体メーカーとして、国内の半導体メーカーのトップです。
ルネサスエレクトロニクス
ルネサスエレクトロニクスは、ルネサステクノロジとNECエレクトロニクスが経営統合することによって2010年4月に設立されました。母体となったルネサステクノロジも、三菱電機と日立製作所の半導体部門が分社化して設立された半導体メーカーです。また一方のNECエレクトロニクスも、NECの半導体部門が分社化されて設立された半導体メーカーという経緯があります。
ルネサスエレクトロニクスは、マイコンやアナログ半導体など幅広い製品を製造しています。特に車載マイコン世界トップ級で、最先端の車載エレクトロニクスの技術開発を行っています。
垂直統合型のビジネスモデルは、品質管理の向上や技術的優位性の確保といった多くのメリットがありますが、高い初期投資コストや経済的リスクなどのデメリットも伴います。
企業がこのモデルを採用するかどうかは、資本力、市場戦略、技術力など多くの要因を総合的に考慮する必要があります。
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