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パソコンやスマートフォンなどの電子機器は、年々性能を向上させながら、小型化されてきました。
その背景には、ムーアの法則と呼ばれる重要な概念によって半導体技術の進化が支えられてきました。
本記事では、ムーアの法則の意味やその影響について、初心者の方にも分かりやすく解説します。
ムーアの法則は、「半導体の集積度(チップに搭載できるトランジスタの数)は18~24ヶ月ごとに倍増する」という経験則です。この法則は、1965年にインテルの共同創業者であるゴードン・ムーア氏が提唱しました。これまで、半導体の性能向上を予測する際の指標や、研究開発の目標として広く用いられてきました。
24ヶ月で集積度が2倍になるということは、5年後には5.66倍、10年後には32倍、15年後には181倍、20年後には1024倍ということになります。トランジスタの数が増えると、同じチップサイズでも計算能力が飛躍的に向上し、デバイスがより高性能かつ低コストで製造できるようになります。
ムーアの法則は半導体業界に多大な影響を与え、約50年にわたって技術革新の目標として機能してきました。その主な影響は以下の通りです。
技術革新の加速
半導体企業が2年ごとに集積度を2倍にするという目標に向けて、積極的に技術開発を進めました。
微細化技術の進化には、特に露光技術の革新が欠かせません。これまで半導体業界では、露光装置の光源を波長の短いものへと変更し続け、微細化技術を進化させてきました。露光波長が短いほど、細かいパターニングをすることができ、集積密度を上げることができるからです。最先端の露光技術では、波長が13.5nmの極端紫外線(Extreme Ultraviolet:EUV)を用いたEUV露光装置が実用化されています。
これにより、半導体の微細化技術が急速に進歩し、より高性能な半導体製品が次々と生み出されました。
製品の小型化・高性能化・低電力化
トランジスタの微細化により、電子機器は同じ面積でより多くの機能を実現できるようになり、小型化しながらも高性能化を実現してきました。
これは、トランジスタを小型化するほど、性能も向上するという事実を理論的に示したスケーリング則に基づいています。例えば、トランジスタの寸法を半分にすると、同じ面積に4倍のトランジスタを搭載でき、各トランジスタの消費電力は1/4になります。
また、単位面積あたりのトランジスタ数が増加し、製造コストの低減が実現しました。
これらにより、より安価で高性能な電子機器が一般消費者にも手の届くものとなりました。
近年、ムーアの法則が提唱された当初のペースを維持することが難しくなってきています。その理由は、トランジスタのサイズが物理的限界に近づきつつあり、従来のスケーリング則に沿った性能向上は、すでに限界に達しつつあるためです。そこで今日では、「モア・ムーア」と「モア・ザン・ムーア」と呼ばれる、2つの新しい技術開発の方向性に分けて議論されるようになってきました。
「モア・ムーア」とは
モア・ムーアとは、新素材や新構造を導入し、従来の半導体の集積化を継続して汎用トランジスタ回路をより高速・高機能化することを目的としています。
特徴としては、最先端の製造ラインを使用して、1nm以下のプロセスや3次元集積化を目指した技術開発を推進しています。これを実現させるには、大規模な設備投資が必要となります。
「モア・ザン・ムーア」とは
一方、モア・ザン・ムーアとは、微細化・集積化に頼らないデバイス性能の向上を目的としてます。
具体的には、半導体チップに不揮発記憶素子やMEMS、各種センサなどの新機能を追加・融合することで、微細化の限界を超えて半導体の性能向上を目指します。
モア・ムーアのような大規模な製造ラインや工場は不要で、製造コストを削減できる可能性があります。また、先進パッケージング技術の活用により、前工程よりも後工程(パッケージング)の重要性が増加しています。
ムーアの法則は、半導体業界の進化を支えてきた重要な概念です。
この法則により、私たちは高性能な電子機器を手頃な価格で利用できるようになりました。
しかし、技術的な限界も見え始めており、新しいアプローチが必要となっています。